クリニック案内

○各種健康保険取扱い
○駐車場あり(12台完備)
原則院内処方

医院名
内科萱場クリニック
院長
萱場 佳郎
住所
〒983-0803
宮城県仙台市宮城野区小田原1-5-32
診療時間
8:30~12:00、14:30~18:00
※土曜日は9:00~12:30までの診療
水曜・土曜午後、日曜、祝日休診
電話番号
022-256-5101
連携病院
  • 東北大学病院
  • 宮城県立がんセンター
  • 仙台医療センター
  • 仙台オープン病院
  • 東北労災病院
  • 東北公済病院
  • 仙台厚生病院
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  • JCHO仙台病院 
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  • イムス明理会仙台総合病院
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ワクチン


 いよいよ新型コロナウイルスのワクチンが始まります。例年行うインフルエンザワクチンは、ウイルスを鶏卵で増やしてウイルス本体をホルマリ

ンで不活化して作ったワクチンで、製造から検定、出荷まで時間がかかります。一方今回のファイザー製の新型コロナウイルスワクチンは、ウイル

ス遺伝子の一部を合成して作っています。そのため去年の大流行からでも、早期にワクチンができあがりました。インフルエンザワクチンは、ワク

チンの効果や副反応は広く知られています。今回のファイザー製ワクチンの製法は新しくてまだデータの蓄積がありませんが、接種によって約95%

有効との報告ありました。ワクチンを接種しなかった方が100人発症した場合、接種した人は5人だけ発症した(95人は発症しなかった)、重症化

も抑えられたとの結果でした。インフルエンザワクチンの有効性、60%(100人中40人は発症する)からみても、有効性が非常に高いことになりま

す。

 副反応については、注射部位の痛み、だるさ、頭痛、筋肉痛、発熱等が比較的高率で報告されています。3週間をおいて2回接種となりますから、

接種翌日には休養を取りやすいように準備した方がいいかもしれません。

 また接種直後の急激な体調変化、アナフィラキシーショックについても報道されています。インフルエンザワクチンよりもやや多い頻度とされて

おり、接種から15~30分は体調の変化に注意が必要で、接種会場での待機が必要です。時間には余裕をもって臨みましょう。

 新型コロナワクチンは、今後毎年接種が必要なのか、肺炎球菌ワクチンのようにしばらくは接種の必要がないかなど、将来については未だデータ

がありません。接種をすることでのメリット、デメリットはそれぞれありますから、接種するかどうかは結局任意、自分で決めることになります。

また接種の今後の具体的な日程についても、未定の状態です。細かい予定については仙台市ワクチン接種専用コールセンター(電話0570-05-

5670)へお問い合わせください。


今年の健(検)診


 新年度には今年も職場の健康診断や住民健診が始まります。昨年の仙台市の特定健診や基礎健診は新型コロナ感染の影響で開始が遅れ、今年1月で

終わりました。令和3年度は、従来通り特定健診では6~9月、基礎健診は7~9月と、来年の1月とに戻ります。

 特定(基礎)健診は、メタボリックシンドロームやその予備軍を早く見つけて、将来の生活習慣病、動脈硬化に起因した病気を予防しようとする

ものです。現在の体調が健康であるかを確認するとともに、病気になる危険因子を探して早く対処するものであり、がんなどの病気を見つける目的

ではありません。その危険因子が見つかったときには、生活習慣を改めて健康管理をしていくことが目的となります。

 また令和元年度からは、仙台市胃がん検診に内視鏡検査が加わりました。対象年齢は50歳以上であり、バリウムで行うX検査の対象年齢35歳以上

とは異なります。バリウムの内服で後日便秘になったり、腸疾患がある方にとっては望ましい検査法が加わりました。ただX線検査で検診を受けた場

合、翌年もX線検査で検診を受けるか、内視鏡検査を受けるかを選べるのに対して、内視鏡検査で検診を受けた場合、翌年は検診の対象となりませ

ん。そのため翌年はX線検査も内視鏡検査も両方受けられない(検診対象とならない)ことから、もし内視鏡の検診で胃炎やポリープなどの指摘があ

った方は、翌年は医療機関で保険診療での経過観察を受けましょう。

 このほかにもさまざまな検診が新年度でまた始まります。仙台市の特定健診の場合、40~74歳の国民健康保険に加入の方は自動的に郵送されてき

ますが、その年齢以外の基礎健診対象の方や種々のがん検診は、自分で申し込むことになります。健(検)診の要綱や申し込み書は例年4月初めの

市政便りに同封されています。またその後は区役所や仙台駅前サービスセンター(アエル5階)にも備えられています。ぜひ忘れずに申し込むように

しましょう。

 

花粉症と


 立春が過ぎて、今年もスギ花粉に悩まされる季節がやってきました。昨年のスギ花粉の飛散量は例年の半分程度でしたが、今年仙台では例年より 

は少ないものの、昨年よりは多いと予想されています。そのため、飛散の始まる時期は例年通り3月上旬からですが、症状は昨年よりは強く出るかも

しれません。昨年症状が出ていた方は、早めに対応していきましょう。花粉症の症状であるくしゃみ、鼻水、鼻づまりや、鼻づまりで匂いがわから

ないといった症状は、昨年はインフルエンザ感染症でもみられて、区別には悩ましいところがありました。ただ今年はインフルエンザの流行は非常

に少ないものの、新型コロナの感染流行が重なっています。新型コロナ感染でもこのような症状があって、区別がつきません。ただ花粉症では、発

熱や鼻づまりがない状態での息苦しさは出ないことから、これらの症状の違いにはぜひ注意しましょう。

 花粉症の治療には、まず抗ヒスタミン薬を使いますが、飛散の始まる前の1~2月から内服を始めた方が症状を抑え込めるとされています。抗ヒス

タミン薬は古くから使われている薬で、第一世代から今は第二世代の薬が出ています。第一世代薬は脳組織に入りやすいことから眠気、鎮静効果を

起こしやすく、現在はその副作用を利用して、睡眠剤として薬局で販売されています。第二世代でも眠気をおこすものがありますが、最近の薬では

眠気の副作用もなく、内服しながら自動車運転、危険作業も可能な薬が出ています。

 花粉症の予防は、花粉を近づけないことであり、花粉の飛散の多い日は外出しない、マスクや眼鏡をかける、帰宅したら髪や上着から花粉を払い

落としてから家に入ることが基本です。スギ花粉症の期間は約2カ月、桜の散るころまでで、せいぜい4月いっぱいと考えられます。ただし5月には

ヒノキの花粉が続いて始まります。毎年スギ花粉でつらい思いをする時は、症状を抑え込む舌下免疫療法が始まっています。処方された薬で眠気や

だるさを感じる時は、かかりつけ医師や薬剤師に相談して辛い季節を安全に乗り切りましょう。 


大きく変動


 今年の冬は寒くて雪が多く、暖冬だった昨シーズンとは大きな違いです。小寒大寒と寒さはいよいよ厳しくなり、春が待ち遠しくなります。さら

に今年は新型コロナ感染もあって、寒い夜にはステイホームで、自宅での飲酒や入浴で温まるのが楽しみとなります。

 居間では暖房をつけて、こたつにでも入って暖かくしています。その時は血圧も安定しており、そこに飲酒もすると血管が拡がって、血圧はさら

に下がっています。その後トイレや入浴のため廊下に出ると、居間の外はそれほど温まっていませんし、トイレや浴室は家の北側にあることが多く

て、冷えた状態です。そこで脱衣をするとプルっと鳥肌が立つように、寒さで血管は収縮して、血圧は急に上昇します。その後湯船に入ると、血管

が拡がって今度は血圧は一気に低下し、特に心臓、脳の血管への負担が大きくなってしまいます(ヒートショック現象:急な温度変化で体に影響を

及ぼすことで、血圧が大きく変動して脈拍が早くなる現象)。さらに風呂から上がって脱衣室に行けば、急速にまた冷やされて、血圧は再度上昇し

ます。入浴時には年間17,000人が亡くなっていると推測されており、多くがヒートショックでの心筋梗塞や脳卒中、湯船の中で血圧が低下して失神

による溺死と考えられています。

 予防としては、普通に居る部屋との温度差を小さくすることであり、トイレや洗面所、風呂場の脱衣室も温めておきましょう。飲酒直後の入浴は

避けて、湯は40度以下のぬるめに設定して、長風呂は控えましょう。糖尿病、脂質異常症、狭心症、心筋梗塞、高血圧、脳梗塞といった持病のある

方、高齢、喫煙、肥満などで動脈硬化が進行していることが心配な方は、特に注意が必要です。首までつかると心臓や肺に負担をかけることから、

肩は湯から出して半身浴をするようにしましょう。湯船から出る時も、立ち眩みを起こさないように、ゆっくりと出るようにして、トイレでもいき

みすぎないようにしましょう。


ウイルス性


 今年もウイルス性胃腸炎が流行する時期になってきました。原因ではノロウイルスが有名であり、晩秋から冬がピークとなります。ノロウイルス

感染は基本的には口から入ることでの感染(経口感染)であり、ウイルスに汚染された食品(特にカキなどの二枚貝)を摂取することで感染しま

す。またウイルスに汚染された物を手や衣服で触って、それを口に入れる、舐めることで口に入ってきます。

 さらにノロウイルスの患者の吐物や下痢便が床に飛び散り、その飛沫を吸い込むことで(飛沫感染)感染します。これは新型コロナウイルスでの

咳による飛沫でもみられる感染経路です。また吐物や便が乾燥すると、ウイルスは空中に舞い上がってそれを吸い込む(空気感染)、飛び散った吐

物が空中で乾燥してウイルスがついた粉塵(飛沫核)となって、それを吸い込む(飛沫核感染)ことでも感染します。

 以前給食で、1~2か月前に製造された刻み海苔が原因でのノロウイルス集団食中毒がありました。ノロウイルスは乾燥や水中に強く、特に低温で

は食品や手すり、ドアノブ等に1カ月以上も生存していて感染を拡げるとされています。新型コロナウイルスは、プラスチックやステンレス表面では

72時間程度生存するのに対して、ノロウイルスはステンレス表面に1週間、絨毯や布では2週間と長期に渡って生存するとされています。新型コロナ

ウイルスの消毒ではアルコールが有効ですが、ノロウイルスには効きません。そのため汚染された場所は、薄めた塩素系消毒剤(ハイター、ブリー

チなどの家庭用漂白剤では500mlのペットボトルに、キャップ2杯分を入れて、水で500mlに薄める)で、乾く前に広めに消毒します。ただし消毒液

の前もっての作り置きは、誤飲の危険もあることからやめましょう。

 症状には激しい嘔吐、下痢、腹痛、軽い発熱がありますが、血便はありません。また感染予防としてのワクチンはないため、小児や高齢の方は、

まずカキの生食を避けるのが無難です。加熱すればウイルスは死滅することから、カキの中心まで85度以上で1分以上しっかり加熱してから食べ

るようにしましょう。患者の吐物や下痢便には、ウイルスが大量に含まれています。片付けはマスクや手袋を着用した上で、しっかり換気をしなが

ら吐物・下痢便が乾燥する前にふき取って、袋に密封して捨てます。つらい症状はせいぜい1日から2日ですが、症状が治まっても、その後数日は

大便にはウイルスが入っています。排便後の手洗いや調理には注意が必要です。今年は新型コロナ感染もあって普段から手洗いやマスクは例年以上

に行われています。ぜひ手洗いを励行してウイルスを口に入れず、発症してしまったら周りに拡げないようにぜひ配慮しましょう。 


年末年始に


 年末年始になると、例年なら夜の会合が増える季節ですが、今年は感染予防もあって会合は減って自宅での食事が増えるかと思います。寒さが厳

しくなると外出する機会も減り、運動量も減って、そこに飲食が増えると体重が増えやすくなります。

 食事の中でも脂質の摂りすぎは、体重増加と共に動脈硬化の原因となっていきます。脂質の中でもLDLコレステロール(悪玉)が増えすぎると、変

性して血管壁に付着して動脈硬化を起こしてきます。LDL高値の原因として、第一は飽和脂肪酸の摂りすぎがあげられます。飽和脂肪酸は、肉の脂身

(鶏肉の皮、バラ肉などの白い部分)やバター、生クリームなどに多く含まれています。またコレステロールは、卵の黄身、レバー、卵を使った料

理、ケーキ、魚卵(筋子、イクラ、タラコ、数の子)、イカに多く含まれることから、クリスマスから年始の食事で摂る機会が増えてきます。

 さらにコレステロールとは異なる脂質で、体のエネルギー源となる中性脂肪があります。中性脂肪が増えすぎても、動脈硬化が進行しやすくな

り、将来糖尿病が合併することもあります。さらに500を超えるような異常な高値になると急性膵炎発症のリスクが高まります。中性脂肪高値の原因

としては、まずは食事カロリーの摂りすぎ、炭水化物や糖質(甘い食事)、甘い果物(果糖)、飲酒、油もの(揚げ物)の過剰があげられます。糖

分の入ったジュース、栄養ドリンクの飲みすぎも注意が必要です。摂取カロリーや飲食内容に気を付けて、減量を心がけましょう。

 また悪玉のLDLコレステロールに対して、動脈硬化を抑える善玉のHDLコレステロールでは、低すぎるのが問題になります。HDLの低値は、中性

脂肪の高値と連動することが多く、原因としては、運動不足、肥満、喫煙があげられます。運動すればHDL値の改善が期待されますが、中高年齢で

運動だけではなかなか上昇しないのが現実です。運動した上で減量する、禁煙することと共に、連動することが多い中性脂肪を下げることを心がけ

ましょう。

 今年、健診などで脂質異常を指摘されている場合は、年末年始には食事、運動に注意した上で、年明けにでも採血で脂質量の変化をみてみましょ

う。脂質異常の治療については、かかりつけ医に相談してみてください。


今年の予防接種


  今年もインフルエンザの季節が始まります。昨シーズン、19年から20年にかけての冬は、インフルエンザは11月下旬から始まり、12月下旬か

ら1月上旬にピークを迎えました。国の調査によると、昨年は2009年に流行したいわゆる新型Aインフルエンザ(パンデミック)の亜型

(AH1pdm09亜型)が多く流行(86%)し、B型(ビクトリア系統)12%、A香港の亜型は2%程度でした。当初はAH1pdm09亜型から始まったも

のの12月半ばからB型(ビクトリア系統)が増えて、2月下旬からは、B型がAH1pdm09亜型を上回って、4月下旬にはインフルエンザは収束されて

いきました。一昨年(18年から19年シーズン)では、A香港型が56%、AH1pdm09亜型が38%、B型が6%の結果でしたが、昨シーズンには内訳が

大きくかわったようです。

 今年の予防接種も、4種類(A香港、AH1pdm09、B山形系統、Bビクトリア系統)の成分でのワクチンです。インフルエンザワクチン製造は、こ

こ数年は減産傾向だったのが、今年は新型コロナ感染もあって、数年内で最大の製造量となっています。今年の冬にインフルエンザがどれほど流行

するかはわかりませんが、今年冬の南半球や、夏の沖縄でのインフルエンザ感染は少なかったとのニュースがありました。外国からの人の出入りが

制限されて、マスクや手洗いが徹底され、ウイルス感染の機会そのものが減ったためとも考えられます。

 予防接種をした後効果が出るのに2週間程度かかり、効果は約5カ月続くとされます。例年翌年春、桜の咲くころまでインフルエンザが続くとすれ

ば、遅くとも11月中には接種しましょう。

 インフルエンザや新型コロナ感染では、肺にダメージを受けます。その後口内にいることもある肺炎球菌が肺に感染して、さらに肺に重篤な炎症

をおこしてくることがあります。高齢者の死亡原因は、がん、脳卒中、心疾患を抜いて一位は肺炎であり、高齢の方でもしこれまで受けていなけれ

ば、5年に一回行えばいい肺炎球菌予防接種も、今年は受けておきましょう。


止まると


 彼岸を過ぎると秋の日はつるべ落としで夕暮れが早くなり、「秋の夜長」といわれる季節になってきます。夜は睡眠を十分にとって朝も快調に目

覚めたいものですが、いびきをかいて周囲に迷惑をかけることがあります。

 就寝中に舌根(舌の根元)が、のどの奥に落ち込むと、いびきが起こります。そしてさらに舌根が落ち込んでしまうと、気道を塞いで呼吸が止

まってしまいます。太っていてあごや首に脂肪が付いている、花粉症、副鼻腔炎などで鼻がつまっている、扁桃腺が大きい、生来あごが小さめだと

いびきをかきやすく、特に飲酒後や睡眠剤内服後は気道の周囲の筋肉がゆるんで、さらにかきやすくなる上に呼吸も止まりやすくなります。

 呼吸が止まる症状で、睡眠中に10秒以上の無呼吸状態になり、この状態が7時間に30回以上あるいは1時間で5回以上みられる場合に、睡眠時無呼

吸症候群(SAS)と呼ばれます。通常97~99%といった血液中の酸素飽和度が、SASでは呼吸が止まることで70~80%台と下がってしまい、大量の

酸素が必要な脳や心臓には負担がかかってしまいます。SASで血中酸素飽和度が下がった脳は、呼吸を深くするように呼吸筋を刺激します。その刺

激を頻回に行うようになってしまうと、脳は寝ることができずに眠りが浅くなり、ストレスに対抗するための自律神経(交感神経)が働いて、血圧

の上昇がみられます。SASの場合、健康な人と比べて脳卒中や高血圧は約3倍なりやすいと報告されており、他の合併症として、虚血性心疾患、心不

全、不整脈、糖尿病、肺高血圧などがあげられます。逆にこのSASが改善すると血圧の低下もみられて、降圧剤内服が不要になることもあります。

周囲から就寝中にいびきをかく、息が止まると指摘されている場合、昼間に無性に眠くなる場合は、注意が必要です。SASの人は、交通事故の発生

率が健康な人に比べて2~3倍高いとのデータもあり、2003年新幹線の運転手が運転中に居眠りしたまま列車が走り、SASの持病があったとの報道も

ありました。

 いびきをかく本人はあまり気付きませんから、具体的にどの程度いびきをかくのか、呼吸が止まるのかをみるには、簡易検査があります。まずは

医療機関で相談してみましょう。 


来春は


 今年のスギ花粉症では、例年より飛散量が少なかったためか、仙台では症状の軽い方が多かったようです。花粉の飛散量は、前年夏の日照量が多

く、雨が少なく、気温が高い時期が続くとスギの花芽が多くなって翌年の飛散が多くなります。今年の夏は統計上どのように推移したかはまだわか

りませんが、来春にもその季節がやってきます。

 アレルギー性鼻炎は、大きく「通年性」と「季節性」に分けられます。通年性は、年中鼻炎症状がみられるものであり、ハウスダストやペットの

毛などが原因となるものです。一方の季節性は、春のスギやヒノキ、秋のブタクサ等によるものであり、これら花粉症状の治療の基本は内服薬です

が、スギ花粉症では普段からごく少量のスギ花粉(抗原)で体に慣れさせる免疫療法が始まっています。アレルギーの原因となるスギ抗原が、春に

急に体に入ることで花粉症が引き起こされることから、普段から少量のスギ抗原を体に入れて、体に慣れさせれば春の時期になっても不快な症状は

抑え込めるというやり方です。具体的には、ごく少量のスギ抗原でできた製剤を舌の下に入れて、溶かしてその後で飲み込んで、それを毎日繰り返

します。

 利点としては、春のスギによる花粉症状は格段に軽くなることが期待できることです。今年の春にも強い症状が出て、内服薬でも辛かった方に

は、治療法として期待できるかもしれません。ただし問題点としては、ごく少量の抗原を長い期間をかけて体に入れていくことが必要であり、少な

くとも2~3年は内服治療をしていくことが望ましいとされます。また開始するとしても一度に多量の抗原にさらされると、一気にアレルギー反応

(アナフィラキシーショック)がおこる危険もあることから、医師と相談しながら慎重に開始することになります。また春のスギ花粉症状が出てい

る時には、開始できない治療法です。

 開始するとすれば今の時期からであり、毎年春にスギ花粉に強く悩まされる方は、かかりつけ医に相談してみましょう。



今年の梅雨明け後


 梅雨が明けて、今年も蒸し暑い夏がやってきました。非常に暑い最近の夏では熱中症による救急搬送が非常に多く、今年は関東甲信地方で「熱中

症警戒アラート」が試行されるようになりました。

 熱中症とは、体温をコントロールしている脳は平熱に設定しているのに、体温が異常に上昇して冷却がうまくいかない異常状態に陥った症状で

す。熱中症のリスクは、高い気温、むしむしする高い湿度、強い日ざしや高温での料理など強い発熱体のそばに長時間いたり、風のないところで厚

着をして体から熱を捨てられないなど、これらの要因が重なってくるとリスクが高まってきます。その上今年は新型コロナ感染予防のために、マス

ク着用が加わっています。マスクによって、呼吸数や心拍数が一割増えるとされ、血中の二酸化炭素濃度も上がって体に負荷がかかることになりま

す。またマスクをすることで、口元の体温は上がり、体温のコントロールがしにくくなります。

 感染予防から3密を避ける必要はありますが、屋外で周囲に人との距離が十分とれる場合はマスクを外しましょう。またマスクをしている時は、体

に負荷のかかる激しい運動や作業は避けて、こまめに水分補給をしましょう。

 さらに感染予防からは、室内の換気も重要です。熱中症のためにエアコンを使いますが、エアコンは室内の空気を冷やしているだけで室外の空気

を取り入れていませんし、エアコンフィルターでの除菌、ウイルス除去は期待できません。こまめに窓をあけて換気をする必要があります。その際

は部屋の対角線上の窓やドアを開けて空気の流れを作るか、扇風機やサーキュレータを使いましょう。熱中症予防では、室温を28度、湿度は70%以

下を目安とされますが、換気によって室温や湿度は高くなりがちになるので、注意が必要です。

 もし体調不良で熱中症を疑ったら、涼しい場所で冷えたスポーツドリンクや、0.1~0.2%程度の食塩水(水1リットルに食塩1~2g-小

さじ1/3杯程度)で水分補給をしましょう。水分だけではなく塩分もとることが重要です。保冷材などで首筋、腋の下、太ももの付け根等を効率よ

く冷やしたり、衣服を脱いで体を濡らした上で涼しい風をあてて気化熱で冷やします。ただし意識がない時や、意識があっても自分で飲水ができな

い状態の時は、速やかに救急車を依頼して医療機関を受診しましょう。


新型(3)


 今年のゴールデンウィークは、新型コロナウイルスの影響で「ステイホーム」の週間となってしまいました。その後は緊急事態宣言も解除とな

り、プロスポーツも徐々に始まるところですが、先日プロスポーツ選手が新型コロナウイルス抗体陽性と判明し、その後のPCR検査では陰性となっ

たニュースがありました。

 一般にウイルス抗体には、感染当初に上昇してその後低下するIgM抗体と、IgMと入れ替わるように上昇してくるIgG抗体があります。これらの陽

性が判明すると、最近感染したか、以前感染した既往があることになります。新型コロナウイルス抗体を検出するキットは既に発売されていて、健

康保険では検査はできないものの、研究用には使われており、製品によって性能にばらつきがみられますが、感度(抗体をもっている人を検査し

て、実際に抗体がある、との結果が出る割合)は、90%以上とされています。一方現在診断に行われているPCR検査の感度(感染している人を検査

して、実際に陽性、感染していると結果が出る割合)は、せいぜい70%ですから、その感度は高いと言えます。また特異度(実際抗体を持っていない

人に、「もっていない」との結果を出す割合)も99%から100%ですから、PCR法にほぼ近いといえます。ただし抗体検査では、現在もウイルスがい

て周囲への感染力があるか、そうでないかの区別はできないため、感染力を知るためにはPCR検査か、抗原検査が必要となります。

 インフルエンザ簡易検査では、抗原検査の感度は90%以上に対して、新型コロナウイルスの抗原検査キットの感度は30~60%であって、PCR法の

70%程度よりも、さらに感度は低い(感染陽性者に対して陰性の結果が出てしまいやすい)とされています。今年春にヨーロッパで感染者が急増し

た際に、PCR検査の代わりに抗原キットを輸入したら、精度があまりに低くて役に立たず、大量の返品に至ったニュースがありました。そのため抗

原検査が陽性であれば、現在感染していると言えるのに対して、陰性の結果では症状も鑑みた上で、さらにPCR検査が追加必要となってしまうのが

現状です。そのため今後は短時間で費用も安く、安全で高い精度が得られる検査法やキットが出てくることが期待されています。

 今年は、ステイホーム、テレワークから運動不足、体重が増えた方が多いようです。今年の特定健診時期は、緊急事態宣言の影響で例年の6~9

月、1月施行から9~1月へと遅くに変更になりました。また基礎健診は7~9月、1月となっています。これらの健診での脂質、肝機能、腎機能といっ

た採血も後ろにずれたことから、通院治療中で定期的に採血を行っている方は早めに医療機関に相談してみましょう。

 

ビタミンの合成


 立夏も過ぎて、戸外でのレジャーにはいい季節となりましたが、今年のGWは3密を避けて、不要不急の外出は自粛となってしまいました。5~6月

は、波長の短い高エネルギーの紫外線が特に増える時期で、過剰に浴びると、皮膚のたるみやしわといった老化現象、日焼けやしみ、そばかすの原

因、将来の皮膚がんのリスクともなっていきます。ただ紫外線にはそのようなマイナスの面だけではなく、体内でビタミンDの合成を促すプラスの面

もあります。

 骨がもろくなる骨粗しょう症は、40歳代後半からの女性に多いとされ、閉経後の女性ホルモンの変動が指摘されており、治療ではカルシウム剤や

ビタミンD剤を内服することがあります。カルシウムは食事では乳製品、豆、大豆食品、小魚、海藻、野菜に多く含まれています。またビタミンD

は、腸管からのカルシウムの吸収、骨の形成を促すビタミンであり、食事からの摂取と共に、紫外線によって皮膚で合成されます。

 ビタミンDは、日本人は食事から平均7.5μg/日摂取していると言われています。なお目標値は5.5μg/日、最大許容量100μg/日とされており、

平均からすると、ビタミンDは十分取っていることになります。特に卵黄、バター、魚介類(イワシ、ニシン、サケなど)、きのこ(しいたけ、しめ

じ等)に含まれており、ビタミンDが脂質に溶けやすい脂溶性ビタミンから、脂質を含む動物性食品から摂ると吸収されやすいとされています。ただ

食事のバランスが崩れてしまうと不足となり、皮膚での合成分で補うことになります。

 日光紫外線にあたることでビタミンDは合成されることから、少なくとも一日5~15分は顔や手の甲には日光を当てるようにしましょう。ただ日焼

け止めクリームを塗っていると、期待される効果はないことになります。新型コロナ感染は心配な時期ですが、骨粗しょう症への予防には家にこも

るのではなく、3密を避けて木陰でたたずむなど、多少は日光を浴びることがおすすめです。


新型(2)

 

 昨年末から報道された新型コロナウイルス肺炎は、半年足らずで既に世界中で蔓延し、多くの感染者、死亡者を出しています。

 治療薬では、現在のところ特効薬は見つかっていないことから、抗インフルエンザ薬や膵炎、エイズHIV薬、気管支喘息、抗マラリア薬など既存の

薬からの研究がされています。また予防ワクチンでは、開発の第一段階に入ったところとされています。

 検査、診断では、報道にあるように現在「PCR法」が使われています。PCR法は、鼻咽頭から取った粘液検体に新型コロナウイルスの遺伝子が含ま

れているかで診断します。ただし遺伝子の微量な情報を増やして(増幅)判断することから、その感度(ウイルス感染している人を検査して、実際

に感染している、陽性と結果が出る割合)は、せいぜい70%とされています。そのためたとえ感染していても、コロナ感染ではないという結果にな

ってしまうこと(偽陰性)が30%(100人やれば30人)あり得ることになります。また実際感染していない人に、「感染していない」との結果を出

す割合(特異度)は、99%以上ですが完璧に100%ではありません。感染していないのに「感染している」との結果を出してしまうこと(偽陽性)

もないとは言えなくなります。そうなると実際には感染していないのに、治療入院となってしまうこと、検体を摂取する際に飛沫で周囲に感染が拡

がるリスク、検査自体にかかる数時間という時間と費用から、明らかに症状からも新型コロナ感染を強く疑う場合でないとPCR検査を行わないのが

現状です。5分程度で行われるインフルエンザ簡易検査の感度は90%以上ですから、新型コロナ感染のPCR法は、明らかに感度は低いことになりま

す。今後新型コロナウイルス感染でも、短時間で費用も安く、安全に高い精度が得られる検査法が出てくることが期待されています。

 感染は、患者の唾液の飛沫感染や、ウイルスの付着物に手が触れて、その手を口にやることでの接触感染とされています。咳エチケットをぜひ行

いましょう。

 感染拡大を避けるために、現在三つの密を避けるように報道されています。

  ① 密閉:換気の悪い空間、よどんだ空気で、「むんむん」とした状態

  ② 密集:周りに大勢の人がいる、「ぎゅうぎゅう」詰め状態

  ③ 密接:近くで会話して唾液を浴びやすい、「がやがや」といった状態

 これらが揃う環境を作らない、そこに自分自身を置かないように注意しましょう。それでも

  ◆風邪症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている(高齢者、基礎疾患のある方は2日)

  ◆強いだるさ(倦怠感)や息苦しさがある

 という症状が揃ってしまった場合は、まずは

 市民向け相談窓口電話 022-211-3883、022-211-2882(24時間対応)にご相談ください。


今年は


 今年は新型コロナウイルス肺炎と共に、スギ花粉に悩まされる不快な季節がまたやってきました。昨年のスギ花粉の飛散量は、例年並みで症状も

大変でしたが、今年の仙台は過去10年の平均の約半分と予想されていて、症状は軽く済むかもしれません。ただ今年は暖冬でもあったことから、

始まる時期が2月20日頃からと、例年の3月上旬よりも早く始まっています。

 くしゃみ、鼻水、眼の痒みといった花粉症の治療には、まず抗ヒスタミン薬を使いますが、飛散が始まる前の1月から内服を始めた方が、症状を抑

え込めるとされています。抗ヒスタミン薬は古くから使われている薬で、第一世代から今は第二世代の薬が出ています。第一世代薬は脳組織に入り

やすいことから眠気、鎮静効果を起こしやすく、また緑内障や前立腺肥大症では内服不可となっています。そのために第一世代の成分が入っている

市販の商品では、眠気覚ましとしてカフェインやエフェドリン等の興奮効果を期待する成分も添加されています。次の第二世代の中でも眠気をおこ

すものがありますが、最近の薬では脳組織に入りにくく、眠気の副作用もなくて自動車運転、危険作業も可能な薬が出ています。

 さらに最近では、普段からスギ花粉に体を慣れさせて、花粉の飛散時期に症状が出ないようにする、免疫療法が始まっています。ただしこの療法

は、スギ花粉の飛散時期が終わった6~7月以降に始めるものであり、現在のおこっている症状を抑える治療法ではありません。

 花粉症の予防は、花粉を身の周りに近づけないことであり、花粉飛散の多い日は外出しない、マスクや眼鏡をかける、帰宅したら髪や上着から花

粉を払い落として、花粉を家に入れないようにすることが基本です。スギ花粉症の季節は約2カ月、桜が散るころまでであり、かかりつけ医や薬剤師

に相談して、自分に合った薬を見つけてつらい季節を乗り切りましょう。



新型


 昨年末から、中国(武漢)で新型コロナウイルス肺炎が報道されました。これまでコロナウイルスによる感染症は6種類あり、そのうち4種類はい

わゆる風邪の原因ウイルスであり、子供がよくかかるものです。他には2002年に中国広東省で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年に

発生したアラビア半島でのラクダが原因とされるMERSがありました。SARSはコウモリのコロナウイルスが人に感染したとされ、致命率9.6%と高

値でした。またMERSは致命率34.4%と非常に高値である一方、サウジアラビア人の0.15%は既に免疫(抗体)をもっており、大多数は軽い感染で

済んでいることが明らかになりました。そして今回のウイルスは、これらと違うために新型とされています。ただ新型コロナウイルス肺炎は報道さ

れるようになってまだ数カ月であり、状況は現在集積されている状況です。

 感染は、インフルエンザと同じように患者の唾液の飛沫感染や、ウイルスの付着物に手が触れて、その手を口にやることでの接触感染とされてい

ます。そのために頻回の手洗いは非常に有効ですが、ウイルスを吸い込まないためとすればマスクは意味がありません。ウイルスの大きさをサッカ

ーボールに例えれば、マスクの目はサッカーゴールの大きさとなり、予防効果がありません。ただ自分の唾液を周囲に飛ばさないためと、ウイルス

の付着した手で思わず自分の口や鼻を自ら触らないためには有効であり、使用したらマスクは速やかに処分するようにしましょう。マスクがなくて

咳が出る時は、口を手で塞がないで、ハンカチや衣服の袖で口を塞ぐようにします。手で塞いで、ウイルスの付いたその手であちらこちらに触れれ

ば、ウイルスを拡げることになってしまいます。咳エチケットをぜひ行いましょう。

 また室内の換気が重要です。まだまだ寒い日がありますが、少なくとも2~3時間ごとには部屋の窓を開けて、よどんだ空気を外に出すように換気

をしましょう。

 検査診断薬は、まだ一般には流通していないことから、インフルエンザのように簡易検査での診断は困難です。

新型コロナウイルス感染症「疑い例」の定義は、

発熱(37.5度以上)または 咳や息苦しさなどの呼吸器症状/新型コロナウイルス感染症と確定した方と濃厚接触歴がある

発熱(37.5度以上)かつ 咳や息苦しさなどの呼吸器症状/発症から2週間以内に中国湖北省、浙江省、韓国大邱広域市、慶尚北道清道郡に渡

   航歴、居住歴があるか、その方と濃厚接触歴がある

 とされ、これら①や②がある場合は、直接医療機関を受診するのではなく、まず市民向け相談窓口電話022-211-3883(24時間対応)にご相談く

ださい。また

◆風邪症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている(高齢者、基礎疾患のある方は2日)

◆強いだるさ(倦怠感)や息苦しさがある

場合も、まずは前記の市民向け相談窓口022-211-3883(24時間対応)にご相談ください。


さまざまな経路


 今年もウイルス性胃腸炎が流行する時期になってきました。原因としてはノロウイルスが有名であり、食中毒の件数で3割強、患者数では5~6割

を占めていて最多です。件数では3割なのに対して、患者数としては半数以上で、発生すると一件で多くの人に拡がってしまうことを示しています。

さらにさまざまな経路で感染することが、分かっています。

 基本的にはウイルスが口から入ることでの感染(経口感染)であり、ウイルスに汚染された食品(特に二枚貝)や飲料水を摂取することで感染し

ます。またウイルスで汚染された物を手指、衣服で触ることで、それを口に入れる、唇を触る、舐めることで口に入ってきます。

 次には、ノロウイルスの患者の吐物や下痢便が床に飛び散り、その飛沫を吸い込むことで(飛沫感染)感染します。これはインフルエンザでの咳

による飛沫でもみられる感染経路です。さらに吐物や便が乾燥すると、ウイルスは簡単に舞い上がります。もしくは吐物が飛び散ったものが空中で

乾燥してウイルスの付着した粉塵(飛沫核)となり、それを吸い込むことで(空気感染、飛沫核感染)感染します。

 以前給食の親子丼でノロウイルスの集団食中毒が発生して、親子丼にのせた1~2か月前に製造された刻み海苔が原因と判明しました。ノロウイル

スは乾燥や水中に強く、特に低温では一カ月以上も食品や手すり、ドアノブ等に生存していて、感染を拡大するとされています。インフルエンザウ

イルスはステンレス表面に1~2日、絨毯や布で半日程度生存するのに対して、ノロウイルスはステンレス表面に1週間、絨毯や布に2週間と長期に渡

って生存するとされています。

 予防としては、小児や体力の落ちた方は、まずはカキの生食を避けるのが無難です。加熱すればウイルスは死滅することから、食べる際には、中

心まで85度以上で、1分以上加熱して食べるようにしましょう。さらに患者の吐物や下痢便には、ウイルスが大量に含まれており、片付けにはマ

スクや手袋をしっかりと着用した上で、雑巾等で吐物・下痢便をふき取ります。ふき取った雑巾はビニール袋に入れて密封して捨てます。その後で

汚染された場所が乾く前に、薄めた塩素系消毒剤(ハイター、ブリーチなどの家庭用漂白剤では500mlのペットボトルに、キャップ2杯分を入れて、

水で500mlに薄める)で広めに消毒します。

 症状は、通常数日で快方に向かいますが、その間激しい嘔吐、下痢があり脱水に注意です。日ごろから手洗いを励行し、発症してしまったら周囲

に広げないように配慮しましょう。



胸が


 年末年始となって、これから寒さもますます本格的になります。外出の際には厚着をして暖かくして出かけますが、寒い北風に向かって歩いた

り、坂を上ったり等の作業で胸が苦しくなることがあります。寒さから体の熱が奪われないように体表面の血管は収縮します。その時心臓に負荷が

かかり、さらに動脈硬化が進んでいると、心臓の血管(冠動脈)への必要な血液量の供給ができなくなってしまって、心筋が酸素不足に陥ります。

そのために生じる胸の痛みが、狭心症の痛みとなります。狭心症には、発症時の背景で分類されます。

 労作性狭心症: 階段を上ったり、走ったり、雪かきをした時など、体を動かしている(労作)時に胸が苦しくなり、休めばまもなく直るという

時に疑われます。症状としては、胸が締め付けられる(絞扼感)、押し付けられて苦しい(圧迫感)、焼けるようだ(灼熱感)などと表現されま

す。痛みの部位は前胸部、左肩、みぞおち、首、歯に拡がるなどと様々であり、胃のあたりが痛くて胃の病気かと思っていたら、狭心症だったとい

うこともあります。冠動脈の動脈硬化が進んでいる場合にみられ、年齢や糖尿病、肥満といったメタボリックシンドローム、喫煙歴がリスクとなり

ます。

 安静時狭心症、冠攣縮性狭心症: 労作時ではなく就寝中、とくに明け方や午前中安静時に胸が苦しく押さえつけられたようになる発作がありま

す。痛みの部位は労作性と同じですが、心臓の冠動脈が一過性にけいれんしてしまい(攣縮)、心筋に十分に血液が送られなくなるために起こりま

す。攣縮がおさまれば、症状もおさまりますが、この攣縮も冠動脈の動脈硬化の進行過程で起こるとされています。

 不安定狭心症:狭心症の症状が頻回におこるようになり、また労作時ばかりでなく安静時にもおこるようになった状況をいいます。命にかかわる

心筋梗塞(心筋が壊死してしまう)の前触れとされ、発作を繰り返し起こしている間に、大きな発作が来る前に、心筋梗塞が出来上がってしまう場

合があります。狭心痛症状がある場合はそのまま放置することなく、ぜひ医療機関を受診しましょう。

 狭心症の痛みの症状は、持続時間は短く、せいぜい数分~10分と言われています。もしそれが長時間にわたって連続した激しい痛みとなると、心

臓や肺の梗塞、大動脈疾患など命に関わる場合があります。これまで経験したことがないような痛みが続く場合は、早急に医療機関を受診しましょ

う。



牛乳のように


 令和の初年もあとわずかとなり、夜の飲食も増える時期になってきました。遅くまでの多量の飲酒では、アルコール分が体内に残ってしまって翌

日運転する場合は、酒気帯び運転の危険をはらんでいます。アルコールの場合は、二日酔い気分や呼気の酒臭さといった自覚症状に現れますが、同

じように血管血液でも前夜の影響がみられます。

 深夜まで多量の飲酒や揚げ物、油もの、締めと称したラーメン、アイスクリームなど高脂肪、アルコールを口にした場合、翌日の血管血液は牛乳

のようになっています。採血して血液を試験管に入れた場合、通常は血液の上澄みはやや黄色透明ですが、深夜までの飲食の翌日には、脂肪滴で充

満して、牛乳のように白く濁って試験管の反対側は見えない状態となっています。食事でとった脂質は小腸から吸収されて中性脂肪などを多量に含

んだ粒子となり、肝臓に行く途中で少しずつ中性脂肪は分解されて、脂肪酸となって粒子から離れていきます。脂肪酸は細胞に取り込まれて、エネ

ルギー源として使われます。しかし中性脂肪が高値だと、この分解がなかなか進まず血液中に長時間漂って、血管壁に付着して動脈硬化を進行させ

ていきます。

 中性脂肪値と、心筋梗塞などの虚血性心疾患の死亡率では、中性脂肪値が100mg/dlの時の危険率を1とした時、250mg/dlで5倍になるとされてい

ます。また中性脂肪値が高いと、善玉のHDL-コレステロールが少なくなる、「低HDLコレステロール血症」を伴い、さらには高血圧、肥満、糖尿

病といったメタボリックシンドロームに合併につながります。深夜までの飲食翌日の、一時的な中性脂肪高値はまだしも、連日の高値は動脈硬化を

進めていきます。

 予防としては、おのおのの体格や生活活動量にあった摂取カロリーに注意した上で、アルコール、甘い菓子、果物、糖質の摂取を控えましょう。

また食事の中では、鶏皮、クリーム、乳製品、肉の脂身といったカロリー増につながる脂質(油もの)の摂取量に注意します。家庭では体重計に載

る習慣をつけて普段から体重の変化を気にかけて、以前脂質の異常を指摘されたことがある場合は、年一回だけの健診の採血だけではなく、数カ月

ごとには経過を見ていきましょう。


今年のインフルエンザ


 今年もインフルエンザのシーズンが始まります。2016年の冬から17年にかけてのシーズンでは、始まりが例年より二週間ほど遅く、年明けから感

染が拡がって、春まで続きました。17年や18年の冬は12月から本格化して、1月下旬にピークとなり、特に18年の昨シーズンはその後急速に流行が

沈静化していきました。国の調査によると18年冬からの昨シーズンでは、11月の流行初期には2009年に流行したいわゆる新型インフルエンザ(パ

ンデミック)の亜型が流行し、12月からはA香港型が流行して年明けにはA香港型の方が上回りました。さらに春には山形で分離されたB型「山形」

系と、オーストラリアで分離されたB型「ビクトリア」系の内、ビクトリア系が多かったようです。結局1シーズン通してでは、検出率でA香港型が

56%、いわゆるA新型が38%、B型が6%の結果でした。

 今年の予防接種も、4種類(A香港、Aパンデミック、B山形、Bビクトリア)の成分でのワクチンです。ワクチン製造には鶏卵を使った培養で時

間がかかりますが、一昨年は株の種類が途中で変更となってしまい、そのため生産が遅れ、一時はワクチン不足に陥りました。昨年は結局ワクチン

の不足は発生しませんでしたが、ワクチン接種が急増する10月後半から11、12月においては流通が滞り、接種希望の方にいつでもできるという状況

にはありませんでした。

 今年もワクチン生産の総量では不足とはならないようです。ただ、接種需要が多い期間に限ってみれば、流通が潤沢とは言えない状況となってい

ます。ワクチン接種後効果が出るまでに約2週間かかり、効果は1~2か月後にピークとなって約5カ月持続します。今シーズンのインフルエンザの流

行がいつから始まるかはわかりませんが、年明けに受験や結婚式などの大切な日がある時には、それを計算の上で接種を受けるようにしましょう。


寝息が


 このごろは夕暮れも早くなって、夜は読書など秋の夜長と言われる季節になってきました。朝も快調に目覚めたいものですが、睡眠中に呼吸が10

秒以上止まる睡眠時無呼吸がある場合は熟睡できないため、日中に疲労感や眠気が出やすくなり、集中力が低下する等の影響が現れます。睡眠時無

呼吸のある人は健康な人に比べて、交通事故の発生率が2~3倍高いとのデータもあり、以前には列車の運転手が運転中に居眠りしてしまい、睡眠時

無呼吸の持病があったとの報道もありました。

 気道が狭くなると、就寝中には舌根(舌の根元)が、のどの奥に落ち込んで、いびきが起こります。特に飲酒後や睡眠剤内服後は気道の周囲の筋

肉がゆるんで起こりやすくなり、舌根が落ち込んでしまうと気道を塞いで呼吸が止まります。

 気道が狭くなる主な原因は肥満であり、舌根やのどの周囲に脂肪がついて気道が狭くなると、無呼吸がおこりやすくなります。

 睡眠中に呼吸が停止すると血液中の酸素濃度が下がってしまって、大量の酸素が必要な脳や心臓には負担がかかってしまいます。酸素濃度が下が

ってしまった脳は、呼吸を深くするように呼吸筋を刺激します。その刺激を頻回に行うようになってしまうと、脳は休むことができずに眠りが浅く

なります。睡眠が浅くなると、ストレスに対抗するための自律神経(交感神経)が働くことで、血管が収縮して血圧が高くなります。超過残業で極

端に睡眠が短くなると、脳血管疾患が増えるのも、この要因によります。

 実際に病気のリスクも上がるとされ、健康な人と比べて脳卒中や高血圧は約3倍なりやすいと報告されています。呼吸が止まって低酸素状態が続い

た後に普通の呼吸状態に戻ると、酸素ストレスが血管に障害を与えていき、血管の病気である脳卒中や心筋梗塞につながっていきます。

 そのため周りから就寝中にいびきをかく、息が止まると指摘されている場合、昼間に無性に眠くなる場合は、脳心臓血管病の予防のために注意が

必要です。いびきをかく本人はあまり気付きませんから、実際に呼吸がどれだけの時間止まるのかについて客観的にみるには、簡易検査がありま

す。まずは医療機関で相談してみましょう。


いろいろな石


 尿路結石によって、突然の激しい背中の痛みや、血尿で驚かされることがあります。尿路結石は50年前と比べて患者数は3.2倍に増えて、男

性は一生のうち6.5人に1人、女性は13.2人に1人が一生に一度は罹患するとされ、特に最近は女性の増加が目立つとされています。

 結石の成分は男女ともカルシウム結石(シュウ酸カルシウムなど)が8割を占めて、次いで男性では尿酸結石、女性は膀胱炎等の尿路感染が影響す

る感染結石が続きます。どのような結石が出来やすいかは、元々の持病や内服薬、生活習慣等によって決まるとされています。高尿酸血症や副甲状

腺の持病があったり、骨粗しょう症で内服する活性型ビタミンD製剤などは結石の生成を促すとされて、長期間に内服している場合は注意が必要とな

ります。シュウ酸は、コーヒー、紅茶、チョコレートや、ホウレンソウ、タケノコなどの灰汁の多い食物に多く含まれています。一方尿酸は、ビー

ルなどのアルコール類、プリン体の多い食品(レバー、魚干物等)に多く含まれています。さらに砂糖分、塩分の過剰摂取は尿へのカルシウム排出

を促し、動物性蛋白質は、シュウ酸、尿酸、カルシウムの尿への排出を進めてしまいます。そのため、日ごろコーヒーを一日に何杯も飲めば、シュ

ウ酸カルシウム結石を作りやすくなり、ビールなどの多量の飲酒は尿酸結石のリスクを高めます。シュウ酸の取りすぎを抑えるためには、シュウ酸

は水に溶けやすいものの、カルシウムが結合すると消化管から吸収されにくくなることから、ホウレンソウは茹でてシュウ酸を水に溶け出させる、

シュウ酸の多い飲食(コーヒー等)は、単独ではなくて、カルシウム(牛乳等)と一緒に取るようにすると、吸収を減らすことができます。また尿

酸結石の予防では、尿が酸性、アルカリ性かも重要です。尿が酸性では、尿1リットルに尿酸はわずかしか溶けないのに、中性に近くなると10倍以

上溶けます。尿を酸性化する食品(卵、肉、魚介類、米)よりは、アルカリ化する食品(海藻、野菜、豆類、いも、果実)を意識して取るようにし

ましょう。

 尿管結石の発症時期は、発汗による脱水と尿の濃縮のためか、7~9月に多いとされています。そのため予防としては、日ごろからアルコール、

ジュース、コーヒー等ではない水分を2リットル以上と多めに取って、尿量を増やすようにしましょう。


熱中症予防強化月間 

 

 梅雨が明けると、今年も蒸し暑い夏がやってきます。非常に暑かった去年の夏には、国の統計で、熱中症による救急搬送者は9500人、死亡者は

1500人を超えたとされています。2013年から7月は、「熱中症予防強化月間」となっていましたが、酷暑だった去年の熱中症予防強化月間は、7~8

月の2ヶ月間に延長されて、今年も2ヶ月間が予防強化月間となっています。

 熱中症とは、体温をコントロールしている脳は平熱に設定しているのに、体温が異常に上昇して冷却がうまくいかない異常状態に陥った状態で

す。屋外で熱中症が起こる場合は、健康な人が仕事やスポーツ中に短時間でおこることが多いものの、治療によって回復も早く、重症例は少ないと

されています。一方室内でおこる熱中症には高齢者が多く、対応の遅れで重症化もしやすいとされています。熱中症のリスクは、高い気温、むしむ

しする高い湿度、強い日ざし、高温での料理など強い発熱体のそばに長時間いたり、無風のところで厚着をしていて体から熱を捨てられないなど、

これらが重なってくるとリスクが高まってきます。また高温多湿の閉め切った部屋や、仕事やスポーツの最中でこれらのリスク環境を回避できない

場合、これらの環境を不快と感知しにくい高齢者の方の場合は、さらにリスクは高まります。

 熱中症の症状としては、立ちくらみ、足がつる(こむら返り)、めまいといった第一段階から始まり、頭痛、ぐったりする、吐き気、嘔吐といった第

二段階症状へ、さらに重症化すると意識障害、手足のまひ、けいれん、高体温となり命にかかわる状態になります。

 予防としては、室温を28度、湿度は70%以下を目安にして、エアコンや扇風機で風を当てる、水分や塩分をこまめに補給しましょう。もし体調不

良で熱中症を疑ったら、冷房の効いた部屋や木陰で体を休めて、冷えたスポーツドリンクや、0.1~0.2%程度の食塩水(水1リットルに食塩

1~2g-小さじ1/3杯程度)で水分補給をしましょう。保冷材などで首筋、腋の下、太ももの付け根等を効率よく冷やしたり、衣服を脱いで体を

濡らして扇風機をかけて、涼しい風をあてて気化熱で冷やします。ただしもし意識がない時や、意識があっても自分で飲水ができない状態の時は、

速やかに医療機関を受診しましょう。


カンピロバクター


 今年も梅雨入りとなり、湿気と高温から食中毒に注意といわれる季節となりました。食中毒の原因は大きく分けて、ノロ等によるウイルス性、大

腸菌等による細菌性、アニサキス等の寄生虫、フグや毒キノコ等の自然毒、その他に分けられます。季節でみれば、寄生虫や自然毒に季節性はあま

りないものの、ウイルス性の食中毒は冬に多くみられ、細菌性は夏に多く発生しています。国の統計で昨年の原因別の発生件数の内、アニサキスの

原因が35%、ノロウイルス19%、細菌のカンピロバクター菌によるもの24%とされています。一方発生患者数でみると、ノロウイルスが全体

患者数の49%と他を引き離して第一位で、アニサキスは約3%、カンピロバクターは11%となり、ノロウイルスによる発生件数は全体の5分の

1程度ですが、発生すると集団感染となることが多いことになります。細菌感染でよく耳にする病原性大腸菌は、報告された発生件数では全体の

3%程度、患者数でも5%程度と、カンピロバクター菌による食中毒を下回っています。

 カンピロバクター菌は、ニワトリなどの家禽、家畜やペットなど多くの動物がもっているとされており、食中毒の原因は鶏肉のレバー、ささみ、

たたき、鶏わさなど、鶏の半生肉、加熱不足の調理品とされています。しかも流通している鶏のレバーやモモ肉などには菌が多かれ少なかれ付着し

ているとされています。  

 カンピロバクター菌による食中毒は、潜伏期が2~5日、症状は他の菌と同様に、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱であり、血便が見られることも

あります。ただし他の食中毒と異なる点は、感染症状が治っても数週間後に急に手足の運動障害が起こる(ギランバレー症候群)ことがあり、不幸

にも運動障害の後遺症がでたり、呼吸筋麻痺による死亡例も知られています。

 一般に食中毒の予防は、細菌をつけない、増やさない、加熱殺菌することであり、生肉に触れた手指、包丁、まな板で、他の食材を扱わないこと

です。⇒⇒お店で「新鮮でレア(珍しい)な鶏レバーが入荷したから」と勧められても、生(レア)で食べるのはやめましょう。

 鶏肉は完全に加熱してから食べるようにしましょう。