クリニック案内

○各種健康保険取扱い
○駐車場あり(12台完備)
原則院内処方

医院名
内科萱場クリニック
院長
萱場 佳郎
住所
〒983-0803
宮城県仙台市宮城野区小田原1-5-32
診療時間
8:30~12:00、14:30~18:00
※土曜日は9:00~12:30までの診療
水曜・土曜午後、日曜、祝日休診
電話番号
022-256-5101
連携病院
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  • イムス明理会仙台総合病院
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秋の夜

 日暮れが早くなって、秋らしくなってきました。秋には夜長を楽しんで、虫の音を聴きながら、よい眠りにつきたいものです。ただ特に高齢の方は「眠りが浅い」、「眠りが短い」という特徴があり、60歳以上の方の約3人に1人は、睡眠に問題があるとされています。長期間にわたって夜間の不眠が続き、日中にだるさ、食欲低下、集中力低下や抑うつといった不調を自覚して生活の質が低下すると、不眠症とされます。

 不眠症には①眠りが浅くて夜間に何回も目が覚める中途覚醒、②寝つきが悪い入眠障害、③早朝に目が覚める早朝覚醒、④ある程度眠ってもぐっすり眠ったとの満足感が得られない熟眠障害に分けられます。

 もともと加齢ととともに必要な睡眠時間は減る傾向にあり、20歳台では7時間ほどだったのが、50~60歳台では6時間ほど、80歳台では5.5時間ほどとされています。それぞれ個人差はありますが、仕事からリタイアし、日中の消費エネルギーが減れば、必要とする睡眠量も少なくなります。そのため暇だからと、早い時間から寝床にいても、実際の睡眠時間は減ってきて、眠りも浅くなる傾向があります。

 不眠対策としては、「体内時計を乱さない」ように、就寝、起床時間を一定にする、休日前の夜更かしや朝寝坊、長時間の昼寝は避けましょう。太陽光などの強い光は、体内時計をリセットする働きがあります。光を浴びてから14時間以降に眠気が出るとされていて、早朝に光を浴びると夜の眠くなる時間が早くなり、夜に強い光を浴びると朝起きがつらくなります。朝型の生活をするのであれば朝の外出がいいのですが、早朝に覚醒するのが困るのであれば、朝日を浴びるのを避けて、午後や夕方に外出して体内時計を夜型にしていきます。

 また「睡眠にメリハリをつけて」、やることがないからと9時頃から床に就いても、うとうとするだけで質のいい睡眠は望めません。眠くなるタイミングが9時頃としても、できるだけ起きていて、本当に眠くなってから床に就くようにしましょう。

 これらの対策をとっても眠れない時は、一時的でも睡眠導入剤を利用します。また市販には「睡眠改善薬」がありますが、花粉症薬の副作用の眠気を利用したものなど、本来の睡眠導入剤ではありません。出張先での不眠など、一時しのぎでなければ、常時連用は避けましょう。また不眠の原因には、精神的ストレス、体調不良、薬剤によるもの、環境の変化などもありえます。不眠が長期間にわたって続く時は、改めてかかりつけ医や精神科等に相談してみましょう。


痛痒く

 胸や腹、顔や頭に何か違和感があると思っていたら、次第に痛痒くなって、その後発疹、水疱が現れて広範囲のひどい痛みに変わっていくことがあります。帯状疱疹(ヘルペス)として知られていますが、最近発症する方が増加しています。平成26年に幼児への水痘ワクチンの定期接種が始まったために、水痘を発症する子供が減りました。そのため親の世代が、子供の発症した水痘に触れることが減ったために、新型コロナワクチンでもいわれた「ブースター効果(ウイルスへの免疫が再び活性化する効果)」が得られなくなったためとされています。発症した方の約7割を、50歳以上の方が占めており、80歳までに3人に1人は経験するとのデータもあります。小児期で感染した水痘・帯状疱疹ウイルスが、顔面頭部の三叉神経や脊椎の神経節細胞に残っていて、免疫能が落ちてきた50歳台以上で、ウイルスが再び活性化すると発症してきます。特に顔面頭部の三叉神経では、文字通り三本に分かれていることから、目の近くの神経では、角膜炎や視力低下、耳から顎にかけてでは、顔がゆがむなどの顔面神経麻痺、脳に波及すれば脳炎発症のリスクが知られています。

 帯状疱疹は、抗ウイルス薬によっての治療となりますが、神経が傷ついて、変性してしまうと、後遺症として夜も眠れないほどの痛みが残ってしまうことがあります(神経障害性疼痛)。この疼痛は、特に60歳以上で、発疹が重症で、症状の初期で痛みが激しかった方が起こしやすいとされています。その際は神経、精神科的に働く痛み止めや、麻酔科、ペインクリニックでのブロック注射などが必要となることもあります。            

 水痘・帯状疱疹ウイルスは、小児期に感染してからは体内で生き続けており、死滅させることはできません。ただ50歳以上でワクチンをしておくと症状が軽かったり、後遺症のリスクを減らすことが可能とされています。接種費用に公的助成はありませんが、接種を検討する場合は、新型コロナウイルスワクチンや、秋には季節性インフルエンザワクチンが始まることから、接種のタイミングを医療機関に相談してみましょう。


バランスが崩れて

 今年は梅雨が6月には明けてしまい、例年より1か月早く蒸し暑い夏がやってきました。毎年夏には熱中症に注意と呼びかけられていますが、熱中症に至らないまでも、日ごろから脱水状態には注意です。体の機能を維持するための体液は、血液やリンパ液、消化液などからなっており、体に入ってくる水分、塩分量と、尿や汗、呼気などで出ていく水分、塩分量のバランスが普段はとれており、腎臓はそのバランスをとるのに大きく関係しています。

 そこで暑さのため大量に汗をかいたり、食中毒で頻回の下痢のために水分の喪失が増えたり、水分摂取がままならないとバランスが崩れて、脱水状態に陥ってしまいます。体液は内臓に栄養素や酸素を運びますが、その支障をきたすと、脳や肝臓、腎臓には重大な障害を起こしてしまいます。特に高齢の方は脱水になりやすいとされています。高齢の方は、食欲の低下や、頻回のトイレを避けるために飲水を抑える傾向にあります。また感覚機能の低下からのどの渇きに気づきにくいとされ、認知症では特にその傾向が強いとされています。また高血圧のために、尿の排泄を促してナトリウムを捨てる利尿剤を内服している場合も、排尿量が増えて脱水になりやすくなります。また糖尿病の治療策にも、血糖を下げるために糖を尿に捨てる機序で排尿量を増やす薬があり、脱水には注意が必要です。

 脱水の初期では、なんかボーとしている、唇がカサカサして、口内が乾いている、うとうとと傾眠傾向にある、めまい、ふらつき、爪を押しても色がすぐに戻らないといった症状がみられてきます。特に高齢の方には、周りからの声かけ、観察が大事です。

 予防としては、普段から食事以外に1日1~1.5リットルの水分は取るように心がけましょう。そしてもし脱水になってしまった時は、水分と塩分を取るために、経口補水液(OS-1?)の内服が最も手軽です。経口補水液は水に食塩と、ブドウ糖を加えたもので、水分、塩分の体内への吸収を促します。経口補水液がおいしいと感じる時は脱水状態にあるときです。もしくは、水1リットルに食塩3g、砂糖20~40gで、経口補水液を家庭でもつくることができます。ただ経口補水液が塩辛いと感じるようになったら、脱水が改善してきたことから、塩分の少ないスポーツドリンクに切り替えて構いません。しかしもし意識がない時や、意識があっても自分で飲水ができない状態の時は、速やかに医療機関を受診しましょう。


4回目

 今年になって3回目の新型コロナウイルスの予防接種が始まりましたが、すでに4回目の追加接種が始まります。4回目の接種対象は60歳以上の方と、60歳未満でも重症化が危惧される基礎疾患のある方などとされています。

 基礎疾患として、①気管支喘息などの呼吸器疾患、②高血圧も含む狭心症などの心臓疾患、③透析中など慢性腎臓病、④肝硬変など慢性肝臓病、⑤治療中の糖尿病、⑥鉄欠乏性貧血を除く血液疾患、⑦がんも含む免疫機能が低下する疾患、⑧ステロイド剤などで免疫機能を抑えて行う治療中、⑨睡眠時無呼吸症候群、?BMI(体重÷身長÷身長×10000)が30以上の肥満状態、などが挙げられています。そのためこの基礎疾患の範囲には、高い尿酸値、コレステロールなどの脂質異常、胃炎や逆流性食道炎、胃腸のポリープなどの方は含まれていません。今回4回目から、前回よりも期間が短縮されて3回目接種日から5ヶ月経過後となりました。外国のデータで3回目の接種後の免疫能が、予想より早めに低下することがわかったためです。実際に3回目ワクチンを接種しても感染例がみられています。そのため4回目接種の目的は、新型コロナへの感染予防ではなく、重症化リスクを下げることとされました。なおファイザーやモデルナ社製のmRNAワクチンではない組み換え蛋白質ワクチン(ノババックス製)が最近接種開始になり、さらに間もなく国産のワクチンが承認される予定とのことです。ただ組み換え蛋白質ワクチンでの4回目接種は、現在認められていないことから、4回目接種は従来のmRNAワクチンで行われます。

 今後将来にわたって5回目、6回目接種となっていくかは、現在は決まっていません。また新しい製法でのワクチン接種も始まっていますが、これらのワクチンでの長期間でみた安全性データはありません。4回目以降接種をするかどうかは結局任意、自分で決めることになります。なお接種の今後の具体的な日程や予約については、仙台市ワクチン接種専用コールセンター(電話0120-39-5670)へお問い合わせください。


歯の健康

 今年も6月には、「歯と口の健康週間」(4日~10日)が始まります。以前は虫歯予防デーなどと言われていましたが、平成25年からは「歯と口の健康週間」、歯と口の健康に関する普及啓発期間とされています。

 また8020(ハチマルニイマル)運動が提唱されています。高齢(80歳)になっても、自分の歯が20本以上あれば噛む機能が維持されて、健やかな生活を送れるだろうとの考えです。歯と歯ぐき(歯肉)の隙間(歯周ポケット)に細菌が侵入して炎症を起こし、 歯を支える骨を溶かしていくのが歯周病です。歯を失う原因の9割は齲歯(虫歯)と歯周病で占められており、そのリスク要因としては、歯磨きが不十分な口腔清掃の不良や喫煙が挙げられます。飲食後や特に就寝前には丁寧な歯磨きが重要であり、喫煙でのニコチンや一酸化炭素が、口腔内の免疫能に悪影響を与えるとされています。

 また歯周病は、歯を失う原因だけでなく、歯周病菌や炎症物質が血流にのって全身に運ばれることから、非アルコール性肝炎、早産、低体重児出産、血管系では動脈硬化の進行、脳梗塞や心臓病、慢性腎臓病との関連が明らかになってきました。また菌を嚥下することからくる誤嚥性肺炎、糖尿病は歯周病によってインスリンの効果が妨げられて、血糖コントロール不良になりやすくなります。また糖尿病自体も、歯周病を悪化させやすいとされています。さらに最近では歯が失われると、かむ力が低下して、かめなくなることで認知症の発生リスクが高まることも、わかってきました。

 たかが虫歯、歯がしみる、出血する、たかが歯周病ではありません。将来にわたって歯を大事にして全身疾患、認知症を予防する意味から、定期的に歯の健診は受けるようにしましょう。


健診の項目で

 新年度で今年も健診が始まります。「尿酸」は、会社就職時や定期健診など就業上の健診項目には入っていませんが、住民健診やドックでは記載されています。尿酸値が高くなると、痛風発作へのリスクが上がる他に、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病・透析のリスクが上がります。血液に溶けている尿酸が血管壁に入り込んで炎症の原因となることから、動脈硬化が進んでいきます。また腎臓の血管が動脈硬化となれば、血液をろ過する能力が低下して将来人工透析導入になりかねません。また尿酸が結晶となって沈殿すれば、尿管結石として激しい痛みを引き起こすことがあります。

 尿酸値が高い方の8割は、肥満、高血圧、脂質異常なども合併しているとされていて、動脈硬化をおこしやすい状況です。ましてや喫煙しているとますます進行させていくことから、早くからこれらのリスク要因を抑え込んでいくことが重要です。尿酸値の基準値は7㎎/dlで、もともと女性は女性ホルモンの関係で、高尿酸血症にはなりにくいとされます。ただ閉経後の女性の方では、約5%の方は高尿酸血症があるとされていることから、注意が必要です。

 尿酸値が上がる原因として、尿酸の原因→プリン体→ビールが知られていますが、ビールだけではありません。アルコールが分解される時に、肝臓で細胞のエネルギー源のATPという物質が消費されます。そのATPにプリン体が含まれていることから、結局尿酸値が上昇します。そのため「プリン体ゼロ」のアルコール飲料でも、アルコールを飲めば同じこと、尿酸値に影響することになります。その他の原因には①肥満や、②一気にATPを消費するような無酸素運動(短距離走や腕立て伏せなど)、③果糖(果物の甘味成分)が挙げられます。果糖は肝臓で分解するときにATPを消費して尿酸値を上げることになり、また砂糖にも果糖成分が入っていることから注意が必要です。

 これらのことから、将来のメタボリックシンドロームを考慮して住民健診やドックでは尿酸値項目が含まれています。尿酸への対策としては、生活習慣の見直しや治療が必要となることから、気になる方は医師に相談してみましょう。

 

健診では

 今年も新年度になると、会社の定期健康診断や、住民健診が始まります。住民健診の中では、国民健康保険に加入している40~74歳までの方の特定健診が例年通り6月から、75歳以上や35歳~39歳の方の基礎健診が7月から始まります。この特定健診の目的は、将来のメタボリックシンドロームを予防するための健診であり、動脈硬化による脳卒中、心筋梗塞、腎不全といった血管疾患の予防を目的としています。一方75歳以上の方の基礎健診では、別の目的もあります。通常、体は年齢とともにさまざまな面で機能低下が進み、健康障害が起こりやすくなります。その状態、段階がフレイル(虚弱)と言われ、フレイルの段階を過ぎると、足腰の運動機能や認知機能が低下し、介護が必要となってくるとされています。そのために、フレイルの段階からまずは抜け出て、健康な状態を取り戻すことが大切であり、基礎健診では、早期にフレイルの状態に気づくことが目的でもあります。フレイルを疑うチェック項目として

ダイエットなどをしていないのに半年で2~3kg以上の体重減少、

「わけもなく疲れた」と感じる、

運動や体操を、週に一度もしていない活動量の低下、

歩行速度の低下:1m/秒未満(横断歩道を1回の青で渡り切れない)

5分前のことが思い出せない認知機能の低下

 があり、3項目以上が当てはまると、フレイルとされます。基礎健診では体重も量りますが、フレイルでは食が細くなった低栄養状態での体重減少、筋力低下に対応するため、国は痩せすぎに注意して、筋肉を構成する蛋白質を多くとるように勧めています。蛋白質の多い食事では、肉、魚、卵、豆腐などの豆類、乳製品が挙げられます。また骨粗鬆症や骨折の予防のために、ビタミンDを多く含む魚やきのこを摂り、適度に外出して日光浴をするようにしましょう。

 特定健診対象の方の申し込みは不要ですが、基礎健診対象の方は自分での申し込みが必要です。仙台市の市政便り4月号か、市のホームページからぜひ申し込みをしましょう。

 

今年の花粉症

 立春が過ぎて、今年もスギ花粉に悩まされる季節がやってきました。スギ花粉の飛散数は、前年のスギやヒノキの雄花が作られる6~7月の気象が影響を与えるとされています。この時期に日照時間が多いと、花芽がよく形成されて翌年花粉の飛散が多いとされます。昨年6月は、日照時間は平年並みかやや多く、7月は平年より多かったとされています。そのためスギ花粉の飛散は、昨年は例年の半分程度でしたが、今年仙台では、昨年より多いと予想されています。そのため症状は、昨年より強く出る可能性があります。昨年症状が出ていた方は、特に早めに対応していきましょう。

 さらに今年は、新型コロナのオミクロン株が流行しています。新型コロナ感染でも花粉症でも、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状は共にみられて区別がつきません。ただ花粉症には、発熱や喉の痛み、鼻づまりがない時には息苦しさはないことから、これらの違いにはぜひ注意しましょう。またくしゃみで出る飛沫は、咳での10倍以上といわれています。花粉症でのくしゃみに新型コロナ感染がかぶっていると、周囲に感染を拡げてしまうリスクがあります。くしゃみは急におこりますが、くしゃみの際は袖やハンカチで口元を覆って周囲環境への配慮を行いましょう。さらに花粉症では、目や鼻が痒くてむずむずしてきます。その際、新型コロナウイルスが付着した手で粘膜を触ってしまうと、感染がおこってしまいます。痒くて目鼻をこする時は、手を清潔にしてからが重要です。

 花粉症の治療には、まず抗ヒスタミン薬を内服しますが、飛散の始まる前の1~2月から内服を始めた方が症状を抑え込めるとされています。そして内服でも症状がある時には、点眼薬や点鼻薬も使うことになります。ただ内服薬には、眠気をおこすものがありますから、初めての内服の際は、まずは医療機関最に相談してみましょう。

 花粉症の予防は、まずは体に花粉を近づけないことであり、飛散予報をみて花粉の飛散の多い日は出かけない、マスクや眼鏡をかける、帰宅したら髪や上着から花粉を払い落としてから家に入ることが基本です。スギ花粉症の期間は約2カ月、桜の散る頃までで、せいぜい4月いっぱいと考えられます。ただし5月にはヒノキの花粉が続いて始まります。また毎年スギ花粉でつらい思いをする時は、オフシーズン中に症状を抑え込んでいく舌下免疫療法があります。かかりつけ医師や薬剤師に相談して辛い季節を快適に乗り切りましょう。


ワクチン再び

 新年になって、いよいよ3回目の新型コロナウイルスのワクチン接種が始まります。昨年6月よりほぼ8か月が経過して、今回はブースター接種として行われます。ブースターとは、電気関連では「増幅器」と言われます。昨年行われたmRNAワクチンである新型コロナワクチンは、感染するためにウイルス表面にあるスパイク蛋白遺伝子に対するワクチンです。免疫(中和抗体)を作ることで感染予防に対する有効率約95%と、ワクチンを接種しなかった方が100人発症した場合、接種した人は5人だけ発症した(95人は発症しなかった)、重症化も抑えられたという非常に良好な結果でした。ただその効果も時間と共に50%程度に低下していくことがわかったために、今回追加接種して、再び効果を高めようというものです。イスラエルでの検討では、3回目の接種で、再び感染予防効果は90%台まで戻るとの結果でした。最近はスパイク蛋白に多くの変異をもったオミクロン株が流行してきましたが、従来のワクチンでも効果が期待できることから、イスラエルでは、既に4回目の接種が始まっています。

 ワクチンの副反応については、これまでの接種で注射部位の痛み、だるさ、頭痛、筋肉痛、発熱等が比較的高率で報告されました。今回の3回目ではファイザー製は前回と同量、モデルナでは半分の量の接種となっていますから、3回目の接種でも副反応は同程度か、やや軽いものと考えられています。ただやはり接種翌日には、休養を取りやすい環境を考えておいた方がいいかもしれません。

 また接種直後の急激な体調変化、アナフィラキシーショックについても報道されています。今回は前回までとは違ったワクチン接種があり得ることから、前回は問題なかったとしても、今回の接種でも15~30分は体調の変化に注意が必要です。

 新型コロナワクチンは、4回目の接種も外国では始まっていても長期間で検討したワクチンのデータは揃っていません。3回目も接種をするかどうかは結局任意、自分で決めることになります。また接種の今後の具体的な日程や予約については、仙台市ワクチン接種専用コールセンター(電話0120-39-5670)へお問い合わせください。

 

夜中に

 寒い冬の夜に、温かい布団からトイレに起きるのは、冷えてつらいものです。年齢とともに、夜中にトイレに起きる方の割合は増えるとされていて、何回も起きることになれば、慢性的な睡眠不足になってしまいます。

 原因としてはいくつか挙げられ、まずは①夜間に尿量が増える、があります。尿を作る量を減らす「抗利尿ホルモン」が、夜には脳から分泌されて、通常は尿を減らします。それが加齢とともに分泌されにくくなると、就寝中の尿が増えてしまいます。また日中下半身にたまっていた水分が、体が横になることで心臓に戻ってきて、腎臓から尿として排出されます。対応としては水分の取りすぎを避けましょう。極端な水分制限は問題ですが、就寝前に利尿効果のある飲酒やカフェインの摂取は控えましょう。また夕方から夜にかけて散歩などの運動をすると、日中下半身に溜まった水分を心臓に戻すことができて、就寝中の尿量を減らすことができるとされています。

 原因②として膀胱の容積が小さくなる、があります。加齢とともに膀胱の伸縮性が失われてきて、尿を貯めにくくなってトイレが近くなります。また男性での前立腺肥大、女性では骨盤底筋の緩みからおこりやすくなる、膀胱と尿道の動きの連携がうまくいかなくなる過活動膀胱でも尿が近くなります。前立腺肥大や過活動膀胱に対してはいろいろな薬が出ていますが、さまざまな副作用も知られています。まず医療機関で検査の上で、体や症状に合う薬、治療法を見つけるのが重要です。

 原因③としては睡眠障害があります。就寝中にいびきをかいて、呼吸が止まるといった睡眠時無呼吸症候群では眠りが浅くなります。そして目を覚ますと、トイレに行かなくてはと思ってしまい、トイレの回数が増えます。また眠りが浅いと先ほどの抗利尿ホルモンの分泌が減るため、尿量が増えて就寝中のトイレが近くなってしまいます。睡眠時の呼吸状態については、簡便に検査をすることが可能です。いびきをかいて夜中のトイレが近い場合は、医師に相談してみましょう。


飲食後に

 今年は新型コロナ感染症に悩まされた年でしたが、早くも年末が近づいてきて、クリスマスなどで飲食がすすむ時期になりました。

 健康診断では、血糖や血圧、貧血、肝機能などの項目が行われますが、血糖は正常なのに、食後に血糖が急激に上がることがあります(食後高血糖)。食後高血糖が続くと血管はダメージを受けることになり、その繰り返しで血管が傷んで動脈硬化がすすめば心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まります。特に砂糖、ブドウ糖は飲食後すぐに消化管から吸収されて、血糖値の変動が大きくなることから取りすぎには注意しましょう。空腹時にジュースなどの清涼飲料水、栄養ドリンク、缶コーヒー、氷菓子、菓子パンなどを単独で取りすぎは避けたいものです。

 血糖値を急激に上げないためには、炭水化物、脂質、タンパク質のバランスのとれた食事を一日3食、規則的にとりましょう。国の「日本人の食事摂取基準」では、摂取カロリーで炭水化物(1g:4kカロリー)50~60%、脂質(1g:9kカロリー)20~30%、タンパク質(1g:4kカロリー)13~20%の割合を提唱しています。いわゆるご飯もの(炭水化物)だけを大量に食べるといった偏った食事は避けます。また空腹時間が長いと、食事での反動で血糖値が急上昇しやすくなります。「朝食抜きで仕事をする」や、「昼食から夕食までの時間が長すぎて、就寝前の夕食で空腹のあまり大食いする」といった事態は避けましょう。また野菜、海藻などの食物繊維は、腸からの糖の吸収を遅くすることから一緒に取るようにします。さらに食物繊維の摂取は、心臓血管系の病気(脳卒中、心筋梗塞)、糖尿病といった成人病の発症が抑えられるとの報告もあり、意識して取りたいものです。

 また血糖値を上げないために、極端な糖質制限を行うことも注意です。糖質だけを制限をすると、食事の全体量が減り、栄養不足に陥ることがあります。特に高齢の方では筋肉量が減り、足腰の筋力といった身体機能が低下してしまうことがあります。さらに外国のデータでは、炭水化物の摂取の割合と死亡率には関連があり、炭水化物40%未満の過度の制限や70%以上の過剰摂取では、死亡率の上昇がみられています。死亡率が最も低かったのは炭水化物の摂取が50~55%の場合とされており、食後高血糖をおこさないためにも、食事を一日3食規則的にとって、バランスの良い食事を行いましょう。


今年のインフルエンザ

 今年もあと3か月を切り、まもなく寒い季節がやってきます。今年は夏から秋にかけて新型コロナウイルスワクチン接種が行われましたが、今度はインフルエンザワクチンの時期となります。

 昨年冬から今年春にかけて、インフルエンザ感染は例年に比べて非常に少ない結果でした。理由としては、感染対策でマスクや手洗い、密を避ける、換気を徹底し、国外からの人流が止まった上に、感染の専門家では「ウイルス干渉」がおこった可能性が指摘されています。ウイルス干渉とは、AとBのウイルスがあって、感染する部位がほぼ同じで競合する場合、Aのウイルスが大流行して蔓延すると、感染部位がAで占められてしまってBは感染できずにBの流行は減ってしまうとの考えです。確かに昨シーズンのインフルエンザの感染は、激減しました。今年夏の南半球でもインフルエンザの流行は少なかったようですが、インフルエンザワクチンがあまり行われない亜熱帯地域では、流行していました。マスクなどの感染予防は行われていますが、昨年インフルエンザが流行しなかったために、インフルエンザに対する免疫が低下して、今年は流行が起こる可能性は否定できません。新型コロナワクチンの有効性は95%に対して、インフルエンザワクチンは60%(接種した100人中60人は発症しなくて40人は発症した)とされますが、たとえ発症しても軽症で済むとされています。従って特に高齢の方、基礎疾患のある方は、新型コロナワクチンと同様に、今年もインフルエンザワクチン接種をお勧めします。

 昨年は新型コロナワクチンが国内になかったこともあって、肺炎予防のためにインフルエンザワクチンが増産されました。しかし今年の生産量は例年並みとなります。しかも生産が予定通りにいかなかったメーカーがあって、ワクチンが接種時期のピークに間に合わないことが伝えられています。ワクチンの効果が出るのに2週間かかり、5か月持続するとされます。来年の4月までインフルエンザ感染の可能性があるとすれば、接種は早めに対応していきましょう。

 

秋の夜

 彼岸を過ぎると、急に夕暮れが早くなってきます。読書の秋と言われますが、秋の夜はゆっくり休みたいものです。人間は年齢によって睡眠時間が変わり、加齢と共に睡眠時間は短くなって、10歳代前半では8時間以上だったのが、45歳では6時間半程度、65歳以上では6時間となっていきます。   

 年とともに体の代謝量が減るために、睡眠も長時間は必要なくなってきます。眠くないのに早く床についても、すぐに眠れるものではありません。眠気が出てから、床につくようにしましょう。眠気は脳の温度の低下と共に出てきます。そのために就寝前に脳の温度を上げておくと、眠りにつきやすくなります。温度を上げるためには、就寝数時間前に有酸素運動(軽いジョギングなど)を行うことが効果的です。運動で脳の温度が上昇し、その後脳の温度が低下してくる際に、眠気が出てきます。ただそのためにはタイミングが重要であり、睡眠予定の直前で運動をすると、興奮してしまって眠れなくなります。数時間前に行いましょう。また入浴も脳の温度を上げるために効果的です。ぬるめの温度では長めに、42度では5分程度で体に負担のかからない温度で行い、日中や就寝の直前よりは、就寝2~3時間前に入るようにしましょう。

 ヒトには体内時計がありますが、24時間よりやや長いとされています。このままにするとずるずると遅れていってしまいますが、朝に日光を浴びることで修正されていきます。逆に夜に強い光(特に昼光色)を浴びると、体内時計が伸びて眠りに入りにくいとされており、そのために夜は赤っぽい電球色が望ましいとされています。また就寝前の飲食にも注意が必要です。カフェインの入ったコーヒー、お茶、チョコレートは覚醒作用があり、就寝前は避けましょう。喫煙もニコチンが刺激物の作用となり、飲酒は眠りが浅く、夜中に覚醒しやすくなります。また飲酒では、舌根が沈下し気道周囲の筋が弛緩していびきや睡眠時無呼吸がおこりやすくなり、睡眠の質を下げてしまいます。過度の飲酒は控えるとともに、いびきや無呼吸が周囲から指摘された時は、医療機関に相談してみましょう。

 

涼しくなると

 9月になって涼しくなってくると、夏バテも終わって旬の食材をおいしくいただけるようになります。

 昨年国は、5年ぶりに日本人の「食事摂取基準」を改定して、食塩の接種目標値を、男性は1日7.5g未満、女性は6.5g未満としました。実際の日本人の食塩摂取量は平均1日11g程度とされており、目標値とはかなり離れています。食塩を取りすぎると血液中の塩分濃度が上昇するために、体は最適濃度に戻そう(薄めよう)とする反応で血管内の水分が増えて、その結果血管内の圧力(血圧)が上がります。高い血圧は動脈硬化を進行させて、将来の心筋梗塞、脳卒中の原因となっていきます。また高い血圧が、四六時中臓器に流れ込むことで、圧力に特に弱い脳と腎臓にダメージを与えて、将来には脳梗塞による認知症、腎機能低下での人工透析に進みかねません。夏には汗で水分とともに塩分が体外に出されるために血圧は低めの傾向ですが、涼しくなると汗はあまりかかなくなります。これからの季節は食塩摂取には注意しましょう。麺類の汁はすべて飲まない、刺身、寿司の醤油は少なめにつける、漬物、練り製品などに注意しましょう。外食や、売っている弁当は、一般に濃い味付けになっていることから、ぜひ注意したいものです。普段血圧が気になる方は、日ごろどれだけ塩分を取っているか調べることができます。医療機関で相談してみましょう。

 また食塩の取りすぎを抑えるには、野菜やバナナ、キウイなどに多く含まれるカリウムが役立ちます。カリウムには、食塩の主な成分であるナトリウムを腎臓から体外に排出させる効果があります。意識して野菜をとってナトリウムの排出を促すことで、血圧の低下が期待できることになります。ただし腎機能の低下が指摘されている方や、利尿剤を内服している方は、今度はカリウム濃度の上昇に注意が必要です。まずは医師に相談してみましょう。


今年の夏には

 今年も蒸し暑い夏がやってきました。特に暑い最近の夏では熱中症による緊急搬送が非常に多く、令和2年の夏には熱中症のために1400人以上の方がなくなっています。昨年から関東甲信越地方で始まった熱中症警戒アラートは、今年から全国で発せられるようになりました。熱中症の危険性が極めて高くなると予測されると、屋外に出ないなどの予防行動を促すためにメディアや自治体を通して活動の注意が配信されます。                                       

 熱中症は、体温をコントロールしている脳は平熱を設定しているのに、体温が異常に上昇して冷却がうまくいかない異常状態に陥った状況です。新型コロナ感染予防でのマスク着用もあって、口元の体温が上がり、体温のコントロールがしにくくなっています。マスクによって、呼吸数や心拍数が一割上がるとされ、体に負荷がかかることになります。マスクをしている時は、激しい運動を避けてこまめに水分を補給しましょう。また屋外で周囲の人との距離が十分に保てる時は、マスクを外し、外している時は、会話を控えましょう。特に高齢になると暑さを感じにくくなり、のどの渇きに気づかずに脱水状態に陥りやすくなります。室内では、温度計、湿度計を見やすい所に置いて時々チェックする、室温28度、湿度70%を超えないようにエアコンを積極的に使う、扇風機を使って室内の空気を循環させて、水分を定期的にとるようにします。        

 初期症状には、めまいや立ちくらみ、気分不良、筋肉がつるなどがあります。体調不良で熱中症を疑ったら、涼しい場所で冷えたスポーツドリンクや0.1~0.2%程度の水(水1Lに食塩小さじ1杯程度)で水分補給をしましょう。また保冷剤などで首筋や脇の下、太ももの付け根を冷やしたり、涼しい風をあてて、気化熱で冷やします。ただし意識がなかったり、意識があっても自分で飲水ができない状態の時は、速やかに救急車を依頼して、医療機関を受診しましょう。


 

高温多湿では

  梅雨となって高温多湿のムシムシした時期となり、食中毒に注意といわれる季節になりました。冬にはノロウイルスなどウイルス性胃腸炎が多数みられるのに対して、細菌による食中毒は元々季節を問わないものの、やはり食べ物がいたみやすい夏に多くみられています。原因となる細菌では、病原性大腸菌(O-157など)やカンピロバクター菌、サルモネラ菌などが特に知られています。

 食中毒の予防は、「菌をつけない、ふやさない、やっつける」のが原則です。

 菌が付着した食材や手指では、今から口に入れるものには触れないように注意します。調理前には必ず手を洗う、バーべキューや焼き肉をする時には、自分が食べる時に使う箸で生肉に触れない、生肉を切った包丁やまな板で野菜を切って食べれば、菌が体内に入ってしまいます。生肉をつかむ箸と食べる箸は区別します。食品を保管する時にも、周りから菌がつかないように密閉容器に入れたり、ラップをかけましょう。

 また細菌の多くは、高温で活動が活発になりますが、冷蔵庫では増殖が遅くなります。37度では1個の大腸菌は20分で2個に分裂するとされ、倍々となって6時間経過で26万個以上まで増えることになり、食中毒の発生となります。生鮮食品や惣菜は、購入後は速やかに冷蔵庫に入れて、その後も冷蔵庫を過信せずに早めに食べましょう。

 ほとんどの菌は、加熱によって死滅します。特に肉料理はよく加熱するようにして、中心部まで75度で1分以上加熱することが大事です。一枚の肉なら中心が生でも、全表面を焼いて食べることもありますが、ひき肉の場合は注意しましょう。また包丁やまな板などの調理器具は、洗剤でよく洗ってから熱湯や次亜塩素酸で消毒します。食器を拭く布巾も、濡れたまま放置すると菌が繁殖します。速やかに乾燥させるか、熱湯で消毒しましょう。今年は新型コロナ感染の影響で、テイクアウトや持ち帰りが増えました。外出から帰ったら常温に長時間放置せずに、速やかにいただきしましょう。

 

 

日差しの中


 今年は新型コロナ感染のために「ステイホーム」、「テレワーク」ですが、季節としては快適な時季となりました。日差しは強まり、例年なら屋外行事で、鼻や額が赤くなっていることがあります。地上に来る紫外線は、4月以降初夏にかけて急速に強くなって、時間では太陽が頭上にある10時から14時ころ、緯度が低く、標高が高い山ほど多くなります。また照り返しが強い海や屋外のコンクリート面では特に多くなることから、「密」を避けて郊外の山や海、公園に行った時は、注意が必要です。一方で紫外線には殺菌効果もあり、細菌ウイルスへも効果があるとされています。紫外線による室内の殺菌効果を謳った機器も出ていますが、ヒトがいない時に使われるものであり、ヒトが密の環境下で使われるものではありません。

 また紫外線は、比較的波長が長く、将来皮膚のたるみやしわといった老化現象を引き起こすUV-Aと、短時間での日焼けやしみ、そばかすの原因となる高エネルギーのUV-Bに分けられます。これらは遺伝子DNAを傷つけて皮膚がんのリスクとなり、UV-Bは将来の白内障のリスクとなります。そのため世界保健機関(WHO)は、紫外線の波長ごとに人体に与える指標(紫外線インデックス)を作り、それを基に環境省や気象庁でも、地域、季節や時間帯を考慮した安全な戸外での活動範囲(真夏の日中は戸外での活動を控えるなど)を発表しています。以前は小麦色の肌が健康的ともされましたが、帽子やサングラス、日焼け止めクリーム等を使って、将来の自分の目や皮膚を守りましょう。

 またある種の利尿剤や抗菌薬、湿布薬では、日光過敏症が知られています。特に湿布薬は、剥がしても4週間ほどは日光との反応が起こるとされており、必ず服の下に貼ることが必要です。ましてや周囲に気軽に湿布薬を譲るのはだめです。処方された薬で心配の場合は、医師や薬剤師に相談してみましょう。